CAREER ADVISOR COLUMN
キャリアアドバイザーコラム

入試問題から考える~臨床現場で要求されること~

昨今の医学部小論文試験では実際の臨床現場で要求される対人スキルを問う出題が頻出しています。

本年度の入試では、横浜市立大学医学部医学科の小論文問題に非常に興味深いものがありました。
問題の意義と出題者の狙いについて、管理的立場の医師の意見を紹介させていただきます。

【問題】
あなたは高校の教師である。ある日、授業の一環として稲刈りの体験作業があり、
僻地の農家に田植えの体験授業に生徒を連れて出かけた。稲刈りの体験作業の後、
農家のおばあさんがクラスの生徒全員におにぎりを握ってくれた。
しかし、多くの生徒は他人の握ったおにぎりは食べられないと、たくさん残してしまった。

[問①]
あなたは、おにぎりを食べられない生徒に対しどのように指導しますか。

[問②]
あなたはこの事実をおばあさんにどのように話しますか。

(2019年 横浜市立大学 医学部医学科小論文試験 改題)

民間病院にて副院長を務める50代男性医師の見解

問①に関して、医師に求められる資質の一つに患者様への傾聴力がある。

おにぎりを食べることが出来ない生徒の気持ちに耳を傾けた上で、
衛生保護的な観点から何ら害はないことを納得させる。
そして、どのようにすれば食べることが出来るようになるのか一緒に考える姿勢が大切である。

問②に関して、悪性腫瘍等の患者様に相当のショックを与える告知のケースと似ている。
まず、どんなに言いに難いことであろうとも、事実は事実として伝えなければならない。

そして、いかに患者様の気持ちに寄り添い、理解出来るように噛み砕いて懇切丁寧にケアする必要がある。

問①も問②もアンビバレンスなの側面があることを説明して、患者様に寄り添い、
事実や医学的な最適解を患者様に理解させる努力をするというのが肝要。

共感を示すだけ・事実を通達するだけでは意味がない。

クリニックを複数展開する40代医療法人理事長の見解

恐らく、おばあさんへの心理的なケアを記載するだけでは及第点に至らない可能性がある。
医学部の試験である以上、医学的な視点を踏まえなければならない。

出題者の意図は、「おにぎりの食中毒のリスク」と「他社への思いやりに応える」ことに
どう折り合いをつけるかではないか。

実際、「他人の握ったおにぎりが食べられない」理由は
根拠のないな潔癖性に基づく可能性が高いが、これは医学的には妥当とはいえない。

確かに、素手で握ったおにぎりは食中毒のリスクがあるが、
入念な手洗いを経れば、安全であることを生徒に説明する必要がある。

当然、作って下さったおばあさんの思いやりへ配慮することも大切。

おばあさんにも食中毒のリスクを伝え、ラップなどで握ったり、
保存方法等の医学的説明は行わなければならない。

昨今の子供の価値観等の説明がうまく出来れば理想的な回答だと思いました。

キャリアアドバイザー
加納 由理Yuri_Kanou

教育学部卒業後、語学関係の企業へ。「もっと人の転機に貢献できる仕事がしたい」と転職。産休を2回取得し家では怪獣(子供)の相手をしながら、アドバイザーとして奮闘中。

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