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医師は一般的に年収が高いといわれる職業です。しかし、勤務医として働く中で、自分の年収水準は適正であるのか、あるいは、開業医として働いた方が有利なのか気になることはありませんか?
今回は、勤務医の年収を年代別や診療科目別で紹介したうえで、開業医との年収を比較。勤務医と開業医のそれぞれのメリット・デメリットについて解説します。
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厚生労働省のデータによると、勤務医の平均年収は1,479万円です。別のデータにはなりますが、国税庁の「令和元年分 民間給与実態統計調査」による平均給与(平均年収)は436万円で、正規職員に絞っても503万円です。他の職種と比較して、勤務医の年収は非常に高いことがうかがえます。
厚生労働省の「令和元年賃金構造基本統計調査」をもとに、勤務医の年収を算出しました。
年齢 | 男性 | 女性 |
24歳 | 474万円 | 435万円 |
25~29歳 | 751万円 | 639万円 |
30~34歳 | 952万円 | 1,008万円 |
35~39歳 | 1,197万円 | 1,011万円 |
40~44歳 | 1,340万円 | 1,184万円 |
45~49歳 | 1,572万円 | 1,309万円 |
※「きまって支給する現金給与額」×12+年間賞与その他特別給与額 で算出
医学部は6年制のため、卒業するときは最短で24歳です。20代は初期研修の2年間を終えて、専攻医研修に入ると年収が上がります。30代になると年収が1,000万円台に届くようになります。医師の年収は年齢とともに上がる傾向があり、40代は部長職などの役職に就くケースもあることも年収アップにつながっています。
他方、男性医師と女性医師を比較すると、性別による給与の違いはありませんが、男性の方が年収が高いのは主に2つの要因が考えられます。1つは女性医師は、30代や40代で時短勤務や当直のない勤務など子育てを優先した働き方をするケースが多いことが挙げられます。2つ目は医師は男性が多いことから、役職に男性が就くことが多い傾向がある点です。
医学部を卒業後の2年間は初期研修の期間となり、24歳の年収の平均は男性も女性も400万円台です。研修期間でありながらも給料をもらうことができ、一般的な新卒の年収よりもやや高いといえますが、病院による差があります。
20代後半で専攻医研修に入ると、一人前の医師としての扱いになり、年収の平均は男性は751万円、女性は639万円と、他の職種の同年代よりも高い年収を得られるようになります。また、初期研修の期間は外勤やアルバイトが禁止されていますが、専攻医研修以降は勤務先の就業規則によっては可能です。
ただし、20代の勤務医は当直を月4~6回程度担当することや、長時間労働になりがちなことから、プライベートな時間を確保しにくい面があります。
30代の勤務医は年収が1,000万円前後になり、他の職種と比較して高収入を得ることができます。30代は専門医を取得して臨床経験を積むことで、今後のキャリアを有利にできる年代です。
一方で、厚生労働省による「令和元年 医師の勤務実態調査」では、30代の男性医師の1週間当たりの労働時間の平均は61時間54分で、20代を上回るなど、30代は一般的に最も労働時間の多い年代でもあります。ただし、30代の女性医師の週当たりの労働時間の平均は51時間42分と男性よりも少なく、20代の女性医師の労働時間をも下回ります。これは30代の女性医師は育児との両立のために、働き方を変えているケースあるためだと考えられます。託児所が併設されていたり、勤務体制の配慮があったりするなど、ワークライフバランスを重視した働き方ができる病院もあります。
40代の勤務医の平均年収は、男性で40代前半は1,340万円、40代後半は1,572万円、女性は40代前半は1,184万円、40代後半は1,309万円です。男性、女性ともに30代よりも平均年収は上がり、高収入が得られます。女性医師の方が平均年収が低いのは、子育てを優先した働き方をしているケースや子育てでキャリアを中断したケースがあることが理由と考えられます。
40代は部長などのポストに就く人もいる年代です。また、激務ということは変わらないものの、20代や30代よりは労働時間が減る傾向があります。
独立行政法人労働政策研究・研修機構による「勤務医の就労実態と意識に関する調査」をもとに、診療科目別の平均月収と平均年収をまとめました。
科目 | 平均月収 | 平均年収 |
内科 | 103万円 | 1247万円 |
皮膚科(眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科) | 89万円 | 1078万円 |
整形外科 | 107万円 | 1289万円 |
小児科 | 101万円 | 1220万円 |
産婦人科 | 120万円 | 1466万円 |
精神科 | 102万円 | 1230万円 |
外科 | 114万円 | 1374万円 |
脳神経外科 | 123万円 | 1480万円 |
麻酔科 | 111万円 | 1335万円 |
勤務医の平均年収が最も高い診療科は脳神経外科で、産婦人科、外科、麻酔科が続きます。脳神経外科では、脳梗塞や脳卒中、くも膜下出血といった突然発症する病気に対して、緊急で処置を行う必要があるため、時間外手当が高いことが要因の一つと考えられます。また、産婦人科や外科、麻酔科も手術が発生することから、激務になりやすい傾向があります。
反対に平均年収が低い皮膚科は、緊急対応が発生することが少ない診療科です。
厚生労働省のデータによると、開業医の平均年収は法人は2,530万円、個人事業主は2,458万円です。勤務医の平均年収の1,479万円とは約1.7倍の開きがあります。ただし、勤務医の年収は給与であるのに対して、開業医のうち個人事業主の年収は収支差額であるため、単純に比較することはできません。
【勤務医と開業医(個人事業主)の手取りの違い】
勤務医の手取り=給与-税金 開業医の手取り=売上-(税金+返済+経費) |
開業医の手取りは、売上から従業員の給与や社会保険料、福利厚生、家賃、水道光熱費などの必要経費のほか、開業時の借入金の返済額、税金などを引いたものです。
また、開業医は手取り額=収支差額ではない点にも注意が必要です。税務上、借入金の返済額のうち、必要経費には利子しか含むことができません。開業時に建設費用または賃貸の場合は内装工事費のほか、医療機器の購入などのために借入金の返済がある場合には、収支差額で賄っていることになります。
また、勤務医のような退職金はないため、自分で老後に向けて積み立てていくことが必要です。病気やケガで働けない場合の休業補償もありません。
開業医は勤務医にはない出費が多く、年収アップにつながるとは一概にはいえないのです。
開業医と勤務医の科目別の年収比較はこちらの記事で詳しく解説しています。
>>医師(勤務医・開業医)の生涯年収の平均は?本当にもうかる仕事?
>>開業医は儲かるのか?勤務医との違いを解説|科目による違いも説明
勤務医と開業医には収入や働き方などの面から、メリットやデメリットがあるため、今後のキャリアや働き方、適性を踏まえて考えることが大切です。
勤務医と開業医にはそれぞれ次に挙げるメリットがあります。
メリット比較 | |
勤務医 | 開業医 |
安定した収入が得られる
高度な医療や専門的な医療の技術を身に付けられる 個人でトラブルの対処を行わずに済む |
技術や評判によっては、高い収入が得られる可能性がある
理想とする医療を追求できる 診療体制によっては、当直やオンコールが発生しない |
勤務医は安定した収入が得られるのに対して、開業医は高い収入が得られる可能性があることがメリットです。勤務医は大規模病院や専門病院では高度な医療に触れられる機会があるほか、トラブル対応の専門の部署があるなど、個人だけで対処せずに済むことも魅力です。一方、開業医は自分の理想とする医療を追求したり、当直やオンコールが発生しない診療体制にしたりするなど、運営方針を自由に決められます。
勤務医と開業医には次に挙げるデメリットもあります。
デメリット比較 | |
勤務医 | 開業医 |
年収が急激にアップすることはあまりない
当直やオンコールによって、長時間労働になりやすい 大学の医局に所属している場合は、論文執筆が負担になることがある |
経営者としての能力も必要となり、閉院するリスクがある
代理の医師を確保しなければ休みにくい 患者からのクレーム対応といった業務も発生する 退職金がないため、老後資金を自分で用意しておく必要がある |
勤務医は手術の件数などの実績を上げても、年収が大きくアップすることはあまりない点がデメリットです。一方、開業医は経営手腕も問われるため、閉院するリスクがあります。
働き方の面では、勤務医は当直やオンコールなどが負担になりやすく、開業医は休診をせずに休みたい場合には、代理の医師の確保が必要という点もデメリットです。また、開業医はクレームの対応といった医業以外の業務も発生することがあります。
労働基準法では、原則として1日の法定労働時間は8時間、1週間に40時間までと決められています。しかし、勤務医は法定労働時間を上回る時間外労働が多いのが実情です。
全国医師ユニオンの実施した「勤務医労働実態調査2017」によると、勤務医の診療科ごとの1カ月の時間外労働の平均は、救急科は94時間、産婦人科は83時間と多く、外科は72時間となっています。また、労働基準法では1週間に1回休日を取得することも義務付けられていますが、1カ月の休みが3回以下の勤務医が3割程度います。
こうした実態から、健康に不安を感じている勤務医が4割程度、最近職場を辞めたいと思ったことがある勤務医が6割程度もいるのです。ただし、勤務体制が医療機関によって異なるため、労働環境に負担を感じている場合には、転職をするという選択肢があります。キャリアアップやポストを見込んで転職をすることも可能です。
勤務医は他の職種と比較して、各年代の年収が高いのが特徴です。勤務医よりも開業医の方が年収水準が高いと言われることがありますが、一概には比較できません。ただし、勤務医は労働時間の長さが負担になることもあるため、労働環境などに不満がある場合は転職も視野に入れましょう。すぐに転職を考えていなくても、今自分自身が置かれている状況は「他の病院・他の多くの医師と比較してどうなのか」ということを知っておくだけでも、その後の動き方も変わってきます。その際には、しっかりと将来のキャリアプランを提案してくれるような優秀なエージェントを選びましょう。
【医師ベストキャリア】は医師の転職に特化した、国家資格キャリアコンサルタントの有資格者が多数在籍する精鋭エージェントです。労働環境を改善したいケースはもちろん、今後のキャリアアップに有利な転職となるようにサポートを行っています。こうした転職支援サービスを利用することで、多忙な医師としての勤務を続けながらスムーズに転職活動を行うことができます。
医師ベストキャリアを使って転職した先生の実際の声はこちら。
教育学部卒業後、語学関係の企業へ。「もっと人の転機に貢献できる仕事がしたい」と転職。産休を2回取得し家では怪獣(子供)の相手をしながら、アドバイザーとして奮闘中。