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医師のキャリアにおいては、勤務医として病院に勤め続けるのか、ある程度経験を積んだ後に開業するのかという分岐点に立たされることがあるでしょう。勤務医と開業医では、働き方、手掛ける業務、年収などにおいて、さまざまな違いがあります。特に、年収は開業を目指している人にとって、モチベーションの一つであるともいえるでしょう。ここでは、開業医の収入面や、勤務医と比較したメリット・デメリットについて、ご紹介します。
厚生労働省のデータによると、開業医と勤務医の平均年収は、以下の通りです。
勤務医の年収は、他業種と比較してもトップクラスの年収ですが、開業医はさらに高くなる傾向にあります。上記の数字を見ると、開業医は、勤務医の1.7倍程度、多く稼いでいるように見えるでしょう。しかし、実際は、年収の内容が両者で異なるため、一概に「開業医の方が多く稼げる」とは言い切れないのが実状です。
参照:厚生労働省「勤務医の給料と開業医の収支差額について」
■科目別開業医の平均月収と平均年収
科目 | 平均年収 | 平均月収(換算) | 平均年収 |
内科 | 約2,460万円 | 約205万円 | 約2,460万円 |
皮膚科 | 約2,709万円 | 約225万円 | 約2,709万円 |
整形外科 | 約2,989万円 | 約249万円 | 約2,989万円 |
小児科 | 約3,068万円 | 約255万円 | 約3,068万円 |
産婦人科 | 約4,396万円 | 約366万円 | 約4,396万円 |
眼科 | 約1,511万円 | 約125万円 | 約1,511万円 |
耳鼻咽喉科 | 約1,890万円 | 約157万円 | 約1,890万円 |
精神科 | 約2,588万円 | 約215万円 | 約2,588万円 |
外科 | 約1,927万円 | 約160万円 | 約1,927万円 |
診療科目によっては、年収にばらつきがあり、同じ科目であっても、入院施設の有無によっても、年収の高さが左右されます。手術などで入院が必要となる科目や、緊急性の高い科目については、年収が高くなる傾向にある一方、入院診察が不要で、緊急性の低い皮膚科、精神科は、大きな収益を望める傾向にあることもうかがえます。
参照:厚生労働省「第22回医療経済実態調査(医療機関等調査)」
開業医と勤務医の年収は、内容が異なるため、単純に比較することは難しいでしょう。結論からいえば、勤務医は「給与」であるのに対し、開業医は「収支差額」です。
【勤務医と開業医の手取りの違い】
勤務医の手取り = 給与 - 税金 開業医の手取り = 収支差額 - ( 税金 + 返済 + 経費 ) |
開業医の手取りは、収支差額(売り上げ)から開業時の借り入れの返済、諸経費(家賃、従業員給与、年金、福利厚生など)を賄う必要があります。また、勤務医であれば支払われる退職金や厚生年金がないため、自身で退職金・厚生年金相当のお金を積み立てる必要があります。そのため、開業医の場合は、勤務医よりも年収が1.7倍高いとはいえ、勤務医であればもらえるはずのお金がもらえないだけではなく、勤務医にはない出費が多いため、うまく軌道に乗るまでは一概に「開業医の方が多く稼げる」とは、断言できません。
収入面を見ると、開業医の方が高収入を目指せるといった点では、メリットが大きいと思うかもしれません。しかし、勤務医と開業医の違いには、収入面以外にもさまざまな点があるため、それぞれのメリットとデメリットを比較し、実態を把握することが大切です。
それでは、勤務医と開業医のメリットについて、比較してみましょう。
メリット比較 | |
勤務医 | 開業医 |
雇用と収入が安定している
各種保障や年金がある 医療事故などで個人が責任を追求されにくい |
自分の好きな診療スタイルを取ることができる
独自の判断で仕事ができる 軌道に乗れば年収が高い |
勤務医は、病院という組織に雇われているため、あらゆる面で組織に守られているといった点が大きなメリットです。勤続年数に合わせて給与は上がっていき、月によって収入に波があるといったことがありません。仮に、病気になって働けなくなったとしても、保障があり、退職時には退職金、離職時には失業手当などが受給できるでしょう。
一方、開業医は、独自の方針で診察できるため、自由度の高いといった点がメリットです。また、収入に上限がないため、軌道に乗りさえすれば、大きく稼げるといった点も、大きな魅力といえるでしょう。
続いては、勤務医と開業医のデメリットについて、紹介します。
デメリット比較 | |
勤務医 | 開業医 |
労働時間が長くなりがち
一気に昇給することはあまりない 病院の診療方針に従わなければいけない |
経営者としての仕事やタスクがある
自分の代わりがいないと休みにくい 保障や退職金などがない 開業までの手続きが煩雑 |
勤務医であれば、夜間救急の当番が回ってきたり、緊急性の高い場合は呼び出しがあったり、労働時間が長くなる傾向にあります。また、スキルや知識が優れているからといって一気に収入が上がるようなケースはあまりありません。このように、病院の方針に不満を持っていたとしても、雇われている以上は従う必要があります。
開業医の場合は、経営者としての側面もあるため、経理関連、雇用関連、運営についてなど、医療以外の業務が多いでしょう。また、保障や退職金などがないため、収入の中から自身でしっかり積み立てておく必要があります。
開業医と勤務医は、どちらにもメリット・デメリットがあり、一概に「どちらの方が良い」といったことはいえません。なぜ開業医を目指したいのかという理由を明確にした上で、メリット・デメリットと照らし合わせることで、自身にとっての正解を見つけると良いでしょう。
開業する場合には、年収アップや、独自の診察スタイルを確立したいなど、以下のステップで手続きを進めていきます。
【医師の開業手順】
1. 開業コンセプトの決定:どんな診察をしたいか、クリニックの規模などを決める 2. 開業地選定:医院を開業する場所を決める 3. 事業計画策定:経費を見積もり、どのようなキャッシュフローで経営するのかを具体的にする 4. 資金調達:開業に必要な資金を金融機関から融資してもらう 5. 内装設計:クリニックをどんな内装にするか、スムーズに業務を行うための設計を行う 6. 医療機器の決定:コンセプトに合わせて本当に必要な機器を選定する 7. 雇用準備:従業員の配置や給与・人数などを決定する 8. 宣伝・広告:どのように集客するのか、戦略を練る 9. 行政手続き:保険や開業届など各種手続きを行う |
上記のステップにおいて、専門知識が必要となり、行き詰まりやすいのが、開業地の選定、事業計画策定、資金調達です。特に、開業地の選定が思うように進まないと、開業するまでとても時間がかかってしまいます。できるだけスムーズに進めなければ、開業へのモチベーションが下がってしまったり、収入のない期間が長くなって働かざるを得ない状況になったりする可能性もあります。
開業時は、ある程度の知識やスピード感も必要となるため、開業コンサルタントや開業支援機関を利用しながら、スムーズに行う方が良いでしょう。開業を具体的に考えている方は医院開業バンクというサイトのこちらの記事にわかりやすくまとまっています。
参照:開業医向け医院開業コンサルタントの費用相場|スムーズに進めるコツを解説
参照:医者の開業資金・自己資金はいくら必要?|資金調達に失敗しないためのポイントを解説
現在勤めている病院の経営方針や収入に不満があり、もっとキャリアアップしたいという場合、もちろん開業は一つの方法ではありますが、転職するという方法も選択肢の一つでしょう。転職によってもキャリアアップし、年収のアップや高待遇の職場を見つけることは可能です。「将来的には、開業を目指している」という人にとっても、経験を積むためのステージとして転職を選ぶことが、開業への一つのステップとなるでしょう。
医師ベストキャリアへ転職相談する
開業医の年収は、勤務医よりも1.7倍ほど高い傾向にあり、高収入を狙えることは事実でしょう。ただし、開業医は、経営者という一面もあるため、勤務医と比較しても、さまざまなメリット・デメリットがあります。「開業医と勤務医のどちらが良いか」といったことには正解がなく、医師としてのキャリアにおいて何を重要視するかによって、答えは異なってくるでしょう。「このまま勤務医として働くには不満があるけれど、開業医もハードルが高い」という人には、キャリアアップ転職がおすすめです。現在の労働条件よりも好条件の案件を見つけ、将来の独立を見据えたキャリア設計のための転職をする人もいます。
「年収を上げる」、「今よりも多くの症例を積む」など、キャリアアップ転職の目的は様々。
【医師ベストキャリア】は、医師専門の転職支援サービスで、国家資格キャリアコンサルタントがキャリアアップ転職をサポートします。10年、20年先の人生設計を“忖度なし”で一緒に考える企業姿勢が、他のエージェントと大きく異なる点です。将来のキャリアを前向きに考えているのであれば、一度相談してみると良いでしょう。
医師ベストキャリアを使って転職した先生の声はこちら。
世界遺産・富士山を擁する山梨県出身。法学部卒業後、法律事務所、法律系資格予備校を経て入社。名古屋、広島を中心に全国の医療事情を現場で経験したことが強み。